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PMBOKガイド 第7版に付属する『プロジェクトマネジメント標準』を読んでの感想

こんにちは。Fantiaなど新規サービスのディレクターをしています、いわみーです。 本記事は虎の穴ラボ Advent Calendar 2021 - Qiita 20日目の記事です。そろそろクリスマスが近づいてきて憂……いえ、楽しみですね。 19日目はndsさんの「『Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか』を読んでの感想」でした。

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はじめに

今年の10月26日に、「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版+プロジェクトマネジメント標準」が発売されました。

私は第6版を買っていなかったのですが、第7版が出た時に内容がかなり変わっていると聞き、第7版は是非買わなければ……という気持ちになったので、早速購入して、今読み解きを進めているところです。

私はPMPホルダーでもプロジェクトマネージャ試験合格者でもないのですが、プロジェクトマネジメントを体系的にまとめた本ってなかなか他にないので、『標準的なプロジェクトマネジメントってなんだったっけ』っていうところを確認するために、PMBOKガイドにはお世話になっています。

PMBOKガイドとは?

PMBOKは、PMI(プロジェクトマネジメント協会)が監修する、プロジェクトマネジメントについての知識を体系的にまとめたものです。 具体的な例を挙げて「こういうパターンであればこうすればうまくいく!」と書いてあるハウツー本と違い、プロジェクトマネジメントに必要な考え方や知識を体系的にまとめているものだと思っていただければ。 (イメージ的には文法書とか辞書に近いかなと思っています)

今回のご紹介

「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版+プロジェクトマネジメント標準」は、その名前の通り「知識体系ガイド」パートと「プロジェクトマネジメント標準」パートの2種類があるのですが、今回扱うのは「プロジェクトマネジメント標準」の部分です。 「知識体系ガイド」はまだ私の方で読み切れていないので、いずれ機会があればこちらも扱いたいと思います。

さて、知識体系ガイドパートに限らないことですが、今回のPMBOKはざっくり説明してしまうと、「アウトプット重視のウォーターフロー型」から「価値重視のアジャイル型」に舵を切ったことでしょう。

これは大きな変化だと思っていて、特に私のような自社でビジネスを持っているディレクターは勿論のこと、ビジネス的な成果を求められるディレクターにとってより「実践的」な内容になっています。

第6版までのプロジェクトマネジメント標準

第6版までのプロジェクトマネジメント標準は

  1. 立ち上げ

  2. 計画

  3. 実行

  4. 監視・コントロール

  5. 終結

というプロジェクト・ライフサイクルを重視した、ウォーターフローを前提とした内容でした。

この1~5の各内容と知識エリアを掛け算したものがプロジェクトマネジメントの基本と言えるわけです。

一方で、この内容は「お行儀の良いプロジェクト」にしか適用できないな、とディレクターになった約7年前から思っていました。

正直、プロジェクトにおいてプロジェクト憲章が発行されている現場は見たことがありませんし、監視・コントロールが統合変更管理に基づいて変更管理委員会の承認で行われていることも見たことがありません。

勿論、現実の業務でも参考にする部分は多々ありつつも、かなりの部分が原型を留めないプロジェクトマネジメントになっていたのは間違いないと思います

第7版のプロジェクトマネジメント標準

一方で、第7版はかなり実践的に使える内容の比率が上がったと感じています。

第7版は、プロジェクト・ライフサイクルベースではなく、12の原理原則をベースとしたものに置き換わっています。

  1. スチュワードシップ

  2. チーム

  3. ステイクホルダー

  4. 価値

  5. システム思考

  6. リーダーシップ

  7. テーラリング

  8. 品質

  9. 複雑さ

  10. リスク

  11. 適応力と回復力

  12. チェンジ

特にこの中で、「4. 価値」が入ってきたのは革新的だと思っています。内容が一部ビジネス書のようになっており、「ビジネス・ニーズ」や「事業戦略」がプロジェクトに大きく影響を与えるものとして定義されています。 また、第6版までのPMBOKが、主に単一プロジェクトの成功を目的だったのに対して、「システム思考」「複雑さ」では、プロジェクトもシステムの中の1つであり、複数のシステムが関わったときに生まれるリスクについても具体的ではないにせよ、言及されている点もかなり実務の中に取り入れやすくなったポイントかなと思います。

また、プロジェクトマネジメント標準の前書きのような部分では「本書のスコープ外である」としながらも、ポートフォリオ・マネジメント(経営戦略)についても触れており、「ビジネス」と「プロジェクトマネジメント」に対して踏み込んだ記載があるのも第6版と大きく違う点だという認識です。

ただ、第6版に比べて、第7版の原理・原則ベースは具体性に欠けるな(そうならざるを得なくなったとも言えるかなと思いますが) そういった部分をカバーしているのが「テーラリング」(プロジェクト毎、組織毎に合わせた調整)です。

チーム・メンバーがプロジェクトマネジメント標準を理解した上で、各組織の実情に合わせてテーラリング(=調整)をすることで初めて機能する、そういった類のものとして設計されているように私は感じました。

12の項目を実務に具体化するのはプロジェクトマネジメント経験が必要なので、そういった意味では理解するハードルは上がったかもしれないな、と感じています。(実際私もそういう意図で作られていると理解するまでは、読むのにかなり苦労しました)

今の所の感想

今までのPMBOKはディレクターなどのプロジェクトマネジメント担当者が内容を把握していればいいのではないかな、と思っていました。

しかし、今回の改定では、ビジネスとプロジェクトの関係性が定義されているという点で、プロジェクトマネジメントを任命する立場にある経営層の方、あるいはこれからプロジェクトマネジメントを学びたいエンジニア、デザイナーにもおすすめしやすいなと思いました。(ですが一方で初心者には読みづらい側面もあるのでそこのフォローが難しいなと感じています)

プロマネ経験者、プロマネ志望者は今回の改定は読んで損がない内容となっていると感じたので、よければ皆様もぜひ読んでみてください。

以上、お付き合いありがとうございました。 21日目となる明日は、かのたんさんの「AWSのNoSQL DBとPurpose-Builtの考え方について」です。是非ご覧ください。

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