こんにちは。虎の穴ラボでエンジニアリングマネージャーをしているH.Kです。
本ブログ記事は、虎の穴ラボ Advent Calendar 2024 16日目の記事です。
この記事では虎の穴ラボのエンジニアリングマネージャーの役割を、組織の歴史と文化を踏まえて解説します。 組織作りやエンジニアリングマネージャーの仕事の進め方の参考になれば幸いです。
エンジニアリングマネージャーの役割と業務内容
広木大地さん(エンジニアリング組織論の著者)はエンジニアリングマネージャーの仕事として次の4つの象限をあげています。
- ピープルマネジメント
- テクノロジーマネジメント
- プロジェクトマネジメント
- プロダクトマネジメント
これらを複合的にこなすロールがエンジニアリングマネージャーとなります。
もう少し具体的に見ていくと、以下のような業務を行います。
- チームの目標設定と進捗管理
- メンバーの育成と評価
- 技術的な意思決定とアーキテクチャの設計
- プロジェクトの計画とリソース管理
- 他部門との調整とコミュニケーション
もちろん個別の会社や組織で、やっていることや対象は異なると思います。プロダクトオーナーがいる組織では、エンジニアリングマネージャーはプロダクトマネジメントの一部を担当しないでしょう。
ここからは組織の一例として虎の穴ラボでのエンジニアリングマネジメントの事例を紹介します。
詳細
おおまかに言ってしまえば、前述の4象限すべてを行うロールです。
すべてこなすようになっている理由を歴史的経緯と目的の観点で紐解いていきます。
虎の穴ラボのエンジニアリングマネージャーの歴史
虎の穴ラボは「とらのあな通信販売」、「Fantia(ファンティア)」などの主にとらのあな関連サービスのシステム開発を進めています。
発足初期のエンジニア数は1名から始まり、私が入社した2019年段階でも10名程度の組織でした。そのため明確なマネージャーというロールは存在せず、CTO直轄でエンジニアリングを推進してきました。
その後、組織拡大につれてメンバーからリーダー層とされる立ち位置が自然に発生し、より専門性をもってマネージャーというロールが確立されていきました。
リーダーやマネージャーというロールがなぜ発生したか振り返ってみると、組織の拡大でコミュニケーションパスや考え方の多様化によって、必要だったからだと考えます。
根底として、とらのあなと虎の穴ラボは「クリエイターのファミリーになる」という共通したミッションを掲げており、大きな方針がブレることはありません。 加えて文化としてミッションに紐づいた行動が根付いており、各メンバーが主体性を持ってプロダクトに良い影響を与えていくことができていました。
しかし、ミッションを達成するための「ルート」が人数が増えたことにより、複数考えられるようになりました。
事業全体を俯瞰すると、「ルート」が増えることで新しい可能性が広がります。これまでの制限を超え、新たなアイディアが生まれることがあります。 一方で、いづれかの「ルート」を選択する必要が出たときに「船頭多くして〜」ではないですが、意思決定を一定の精度と基準のもとで行う合理性も生まれました。
また、メンバーの成長という観点でもマネージャーというロールは必要でした。
個人単位では主体性を持ってミッションに向けて行動することはできていましたが、行動に対して客観的な評価がないと、各メンバーの内省力に成長が依存してしまいます。CTOが1人でフィードバックする人数の天井が見えたため、組織を分割して、マネージャーのロールを付与することとなりました。
虎の穴ラボのエンジニアリングマネージャーの目的
虎の穴ラボの開発組織はフロントからバックエンド、仕様策定からリリースまで一貫してエンジニアが進める体制でした。今は組織が少し大きくなったため、一部は専門に切り出しています。
その関係上、各メンバーは常に一定以上のプロジェクトマネジメントとテクノロジーマネジメントの意識を持ち続けていました。
一方で、プロダクトマネジメントやピープルマネジメントという分野については、メンバーの意識の外にあり強化の必要がありました。
結果として、虎の穴ラボのエンジニアリングマネージャーという立ち位置は、不足しているプロダクトマネジメントやピープルマネジメントに対して責務を持つロールになっています。
ただ、前述の通りプロジェクトマネジメントとテクノロジーマネジメントについては常に意識しているものであるため、エンジニアリングマネージャーは4つの象限すべてを見ています。
どういう人がエンジニアリングマネージャーになっていったか
では、初期のマネージャーはどのような人がなっていったのでしょうか?
「虎の穴ラボのエンジニアリングマネージャーの歴史」で明らかにしたように、初期のマネージャーロールは自然発生的に生まれていきました。
今回はあくまで自然発生的なマネージャーの話をします。もちろんマネージャーロールの必要性が強くなってきた最近では実質的に任命する形式になっています。
振り返ってみると、初期のマネージャーはチームに対してのリーダーシップがある人ではないかと思います。
具体的な行動としては次のようなことをしていた人です。
- チーム横断的なプロジェクトを積極的に進めていた人
- 技術的に開発チームを引っ張っていた人
- アサイン先が不明瞭なタスクを率先してさばいていた人
メンバーのプロジェクトに対する主体性がある程度高い中で、「それ以外」のことに積極的に取り組んでいたメンバーがマネージャーになっていきました。
このような「それ以外」のことに積極的に取り組むには、タスクに気付く視野とそれらを適切にさばける視座が必要です。結果論としてマネージャーになっていった人たちは、マネージャーの適正が高かったように思います。
おわりに:エンジニアリングマネージャーの今後について
これまで記載していたとおり、虎の穴ラボのエンジニアリングマネージャーの中には自然とそのように振る舞って、あとからロールがついた人が多く存在します。
この事例は虎の穴ラボの「クリエイターのファミリーになる」というミッションからメンバーが「ユーザーのためになることを全部やる」というバリューを発揮し続けた証左だと考えており、非常に良い文化だと思っています。
しかしながら、この文化に付随する課題として、エンジニアリングマネージャーの仕事の定義が曖昧であることや、育成体制がないことが挙げられます。
この課題に対してはデリゲーションの表を作るなどして対応を進めています。
最近では当初はエンジニアだけだった虎の穴ラボにもディレクターやマーケター、技術推進といった専門性の高いチームが増えてきました。 そのような状況下で、マネージャーというロールについても、より高い専門性をもってチームビルディング等を行うことが求められてきています。
今後は「クリエイターのファミリーになる」ために、虎の穴ラボ全体でエンジニアリングマネージャーを組織的に強くしていきたいです。そして、「ユーザーのためになることを全部やる」の延長線上にある組織課題をどんどん解決し、より良いプロダクトを提供していければなと思います。
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