こんにちは、虎の穴ラボの松尾です。虎の穴ラボでエンジニアリングマネージャーをしています。
この記事は「虎の穴ラボ夏のアドベントカレンダー」25日目の記事です。
今回はアンカーを担当させていただくことになりました。本日までブログを追っていただいた方、本当にありがとうございました!
24日目はY.Fさんによる「開発者も学ぶべきマネジメントのことと、参考書籍紹介」が投稿されました。
唐突に始まるオタクトーク
突然ですが、このブログを書いている今、私は北海道札幌に来ています!
ただいまの期間、私の好きな デジタル声優アイドル「22/7」(ナナニジと略します。よろしくお願いします)の全国ツアーがあり、全部に参加すべく日本を飛び回っています。
- 7/24(日) : ナナニジの札幌公演
- 7/25(月)〜7/27(水) : 札幌のホテルからリモートワーク ←ブログを書いている今ココ
- 7/28(木) : ナナニジの大阪公演(札幌から大阪へ飛びます)
- 7/28(金) : ナナニジの福岡公演(大阪から福岡へ飛びます)
という具体に、間にリモートワークでの仕事を挟みながらの日程です。
虎の穴ラボでは、旅行先からでも仕事をすることができる「ワーケーション」制度を設けています。
興味のある方はこちらもご覧ください。
新たな働き方、ワーケーションを導入します! – 虎の穴ラボ株式会社
そしてこれは今日の私の朝ごはんです。
フルリモートワークを組織に浸透させる
本日の本題はこちらです。
こうして私が今札幌からブログを書けているのも、虎の穴ラボがフルリモートワークへの切替を実践することができているからこそです。
このブログ記事では、フルリモートワークをいかにして実現するか(そして好きなアーティストの地方公演へいかに参加するか!)、またそれを根付かせるかについて、ポイントとなる点を書かせていただきます。
現状の虎の穴ラボ
虎の穴ラボは現在49名の組織です。そして、完全にフルリモートワークで組織全体が動いています。
虎の穴としてオフィスは存在していますが、虎の穴ラボ用の座席は2席しかなく、そこに座る人はほぼゼロになっています。
リモートワークを始めて2年半ほどが経ちますが、この文化が根付いているため、以下のような人たちが非常に多い組織です。
- 2年半一度も出社をしていない人(半数以上はこの状態)
- フルリモートワーク導入後に入社し、初日以外一度も出社していない人
- そもそも地方から業務に携わっている人(虎の穴ラボ全体で7人!北は北海道から南は鹿児島まで、虎の穴ラボは日本全国から勤務できます)
フルリモートワークを浸透させる上で重要な3つのポイント
先に3つのポイントを書きます。
- リモートワークへの移行は「変革」であることを全員が理解する
- 複数のコミュニケーション手法を使い分ける
- 振り返りと改善を繰り返す
それぞれの内容について、この後記載していきます。
Point1. リモートワークへの移行は「変革」であることを全員が理解する
まず大前提として、リモートワークを導入するにあたって全員が「仕事の変革」であることを意識する必要があります。
オフィスワークとリモートワークの違い
一番ありがちな勘違いとして「オフィスでやっていた仕事を自宅でやる」と考えてしまうことです。
リモートワークは、オフィスでの仕事と比べると情報の発信・受信が極端に少なくなります。
例えばオフィスでは、以下のような形で無意識のうちの情報やりとりがありました。
- 朝の顔色・挨拶等で 体調の情報 を発信・受信
- 雑談等で 人となり を発信・受信
- 自分以外の人同士が話している内容から 担当外の仕事情報 を発信・受信
- 経営層・マネージャー層の動きなどから重要プロジェクトのなんとなくの状況 を発信・受信
- 業務中の表情等から 困り具合 を発信・受信
- 残業している姿によって 業務の逼迫具合 を発信・受信
当然これら以外にも無数に情報の受発信があります。
「人がそこにいる」というだけで無数の情報が飛び交うのがオフィスです。
リモートワークではこの前提がなくなります。
リモートワークとは、無意識下で行われていたことがすべて無くなる「変革」です。
組織変革モデル「ADKAR®︎」
「働き方を作るのはマネージャーのお仕事でしょ」と思われがちですが、「変革」はマネージャーだけの力で成し遂げることはできません。
マネージャーもメンバーも全員、組織全体が変革をする意識が必要になります。
組織の変革を行うためのプロセスモデルとして、米国Prosci社のJeff Hiatt氏が開発した「ADKAR」モデルというものがあります。
出典 : 『ADKAR: A Model for Change in Business, Government and our Community』
リモートワークへの変革を行うにあたり、これに当てはめると以下のようになります。
- Aware(認識) : 全員が現状の課題・変革の必要性を認識する段階。ここで重要なのは、マネージャーだけではなくメンバー全員にその認識が広がること。オフィス出社を続けることによる課題や問題などをしっかりと説明。
- Desire(願望) : 認識をした全員が、変革への願望を持つフェーズ。リモートワークへの切替において、メンバー自身それぞれが積極的になり、「実施したい」と思えるようにする。
- Knowledge(知識) : 変革に必要な知識を得るフェーズ。現状の業務を分析して、「オフィスでの仕事と違ってやりにくいポイントはどこか」「どうやったらリモートワークでの問題をなくすことができるか」などを考え、チームで検討していく。
- Ability(能力) : 実際にやってみよう!チームでリモートワークを実践してみる。
- Reinforce(定着) : 一回で完璧に変革をすることはできない。改善・強化を続けて、その変革を定着させていく。
このうち、リモートワークへの切替において重要なのは、「Knowledge(知識)」だと考えています。
どんなマネージャーでも、メンバーひとりひとりの細かな仕事のやり方・考え方・情報の獲方をしているのか全てを把握している人はいません。
このKnowledgeを得るために、マネージャー・メンバー問わず、各々が自己の業務を分析する必要があります。
虎の穴ラボでは、以下のような流れで実践していきました。
- 各々が自身の業務の細分化してリストアップ
- 業務に対して、リモート時のシミュレーション
- リモート時に必要なものを検討(他社事例・書籍・自ら検討などなど)
- 上記を持ち寄り、ミーティング形式でチーム単位に必要なものが満たせるか検討
マネージャーが主体となって先導するものの、ひとりひとり必要なものは異なります。
メンバーはマネージャーに任せきりにするのではなく、自らが変革をサポートする意識を持ち、積極的に業務の分析を行うことが重要です。
Point2. 複数のコミュニケーション手法を使い分ける
オフィスワークとリモートワークの最も大きな違いは、コミュニケーションです(当たり前ですが)。
- エンジニアは非同期コミュニケーションを好みます
- 非同期コミュニケーションで生産性向上!などが叫ばれる時代です
気をつけなければいけないのは、非同期コミュニケーションは決してそれ単体で生産性を上げることができるわけではない、という点です。
コミュニケーション手法は数多くあり、それぞれ特性が異なります。
ここで重要なのは、手法による情報量の差です。
「焦点」のところを少し補足すると、「資料のココに注目してください」「重要ポイントはここです」など、対面で説明するときに重要事項に焦点を合わせられるかどうか、です。
複雑なコミュニケーションを要するもの
必ずWebミーティングを行いましょう。この際、カメラを必ずONにするのも重要です。
視覚による情報があるからこそ、Webミーティングを行う価値があると言ってもいいでしょう。
定例的なもの
- デイリースタンドアップ : 朝会です。デイリースタンドアップは迅速に、かつチーム全体と情報を共有する必要があります。Webミーティングで10分以内に素早く完結させましょう。
- プロジェクトのキックオフ : プロジェクトのキックオフでは内容もさることながら、これからコミュニケーションをとっていく人を知る場でもあります。
- 要件の検討 : 「何が必要か」に焦点を合わせてWebミーティングを行う必要があります。
- プランニング : チケットに対してタスク内容をすり合わせる必要があります。対面が最も効果的です。
- レトロスペクティブ : 改善策の検討は、意見を積極的に飛び交わす場であるべきです。
突発的なもの
- 障害への対応 : 事象・ステークホルダーへの影響確認など、すべてが迅速に判断される必要があります。
Webミーティングへ移行するルール
Slackで意見を交わしていくうちに、それが議論になり、文字だけのコミュニケーションで複雑な情報を扱ってしまうシーンがあります。 このような非効率さをなくすために、以下の基準を設けています。
- Slackでのやりとりが5回以上 → 即Web会議へ!
- 質問事項が5行以上 → 即Web会議へ!
文字だけで複雑なコミュニケーションを行うのは非効率な上、心理的にもストレスになります。
一定のルールのもと、気軽にWeb会議へ切り替えていく必要があります。
その他虎の穴ラボでの実践例
気軽に集まれるWebミーティングの部屋を作成しておき、URLをSlackの関連リンクとして貼っています。
前述したSlackのやり取りからWebミーティングに発生するケースや、緊急障害対応時に迅速に集まる部屋として利用しています。
Point3. 振り返りと改善を繰り返す
リモートワークへの移行を「変革」と捉え、チーム全体で移行に取り組み、コミュニケーション手法を定義したとしても、一度の実践で全てがうまくいくことはありません。
- プロジェクトチームの人数
- 扱うプロダクトの特性
- メンバーのスキルや個性
- 作業環境
何か一つでも異なれば、それは全くの別チームです。
一度確立した運営手法であっても、定期的に振り返りを行い、よりよくできるポイントを探していくことが重要です。
虎の穴ラボでの実践
リモートワークに本格的に移行する際は、チームごとに以下の流れで行っていました。
- 数日間、全員でリモートワークを実践
- 振り返りミーティング(KPTフレームワークを利用)を実施 → 改善を実施
- 1週間程度、全員でリモートワークを実践
- 振り返りミーティング(KPTフレームワークを利用)を実施 → 改善を実施
- フルリモートワークへ移行
これにより、虎の穴ラボ、およびそれぞれのチームにあった運営手法を策定することができています。
また、フルリモートワークに移行した後も、2週間に1回のレトロスペクティブによって改善を継続しています。
その他のPoint 虎の穴ラボが避けたこと
フルリモートワークへの導入を進めるにあたり、「虎の穴ラボが避けたこと」も紹介します。
※当然会社やプロジェクトによってやり方は異なって当然です。これはあくまで、虎の穴ラボの一例として参考までに。
- リモートワークを部分的に実施する
- マネージャー層は出社する : マネージャーが出勤前提の考えしかできなくなるので×
- 日ごとに別々に出社する : 出社有無でコミュニケーション格差が生まれてしまうので×
- 過度な監視と報告
- 常時Web会議室へ接続させて業務 : 心理的安全性が著しく低下。生活音などが気になり集中力低下。×
- 日報で詳細な業務内容を報告 : 日報を書くことが目的になりかねないため×。デイリースタンドアップ、およびアウトプットで十分と判断。
まとめ
ざっとポイントを書くと、以下のようになるかと思います。
- リモートワークへの移行は、働き方の「変革」。マネージャーもメンバーも全員が積極的にそれを意識して、初めて成し遂げられるもの。
- コミュニケーション手段は一つのものに傾倒しない。メリットデメリットを考えて、適切なやりとりを行う。
- 一つとして同じプロジェクトは存在しない!常に改善を続けよう!
虎の穴ラボではメンバー全員のQOLを上げるため(そしてオタクライフを快適なものにするため)、これからも改善活動を続けています。
機会があればまたブログ等で発信させていただきますので、たまに見ていただけると嬉しいです。
P.S.
採用情報
虎の穴ラボではエンジニアを含めさまざまな職種の採用をおこなっております。
興味のある方はぜひ下記のリンク先の内容をご覧ください。
■募集職種
yumenosora.co.jp