本記事は 2023夏のブログ連載企画 最終記事です。 前回は、白石さんによる 「とらラボ!×YUMEMI 勉強法の勉強会#2 を開催しました!」 という記事でした。
今日も今日とて筋トレに励む、虎の穴ラボの大場です。最近はフリーウェイトエリアにも気後れせずに踏み入れるようになりました。
さて、今回は現役高校生が使っている"情報"の教科書を読んでみてわかった、昨今の情報における学習内容や教科書について、30代エンジニアの視点で紹介していきます。 ちなみに一通り読んでみての率直な感想は、「今後つよつよ新卒エンジニアが増えてくる可能性があるかも」という期待と自身の危機感です。
目次
読もうと思ったきっかけ
大したことではないのですが、今年の春頃に某SNSで「高校情報Iの教科書は大人が読んでも学びがある」といったツイートを見たのがきっかけです。
そのツイートに対して個人的に以下の点が気になりました。
- 現代の高校生は"情報"から何を学んでいるのか
- 私が学生だった頃に教わった"情報"からどのように変化したのか
教科書はAmazonから購入可能でしたので、百聞は一見にしかずの精神で実際に読んでみることにしました。
書籍情報
タイトル | 高校情報I JavaScript |
編修/執筆 | 萩谷昌己 |
出版社 | 実教出版 |
より詳細な情報や、目次はリンク先から確認できます。
情報Iのここがスゴい!
1.統計学を学べる
驚いたのは、情報の教科書の中で"統計学"を扱っているという点でした。統計学はここ最近仲間入りしたようです。 具体的には、2022年4月から学習指導要領として高校数学に統計学が加わり、2026年度以降の共通テスト(旧センター試験)で出題範囲に含まれることが決まったそうです。
個人的な感覚からすると、統計学は高校レベルの数学知識を前提に、大学に進学してから学習するものだと勝手に思ってました。 ECサイトのWebエンジニアをしていた身からすると、統計学は身につけておきたい知識の一つです。 高校から統計学に触れられる事に羨ましさを覚えつつも、約10年前よりも学習難易度が遥かに上がっており、現役高校生はさぞ大変な思いをしているのではないかと推測しています。
2.プログラミングを学べる
教科書のタイトルにずばり"JavaScript"が含まれている為、 お察しかと思いますがプログラミングについても教科書で取り上げられています。 約15年前はプログラミングに関して、ここまで詳しくは扱ってなかったと記憶しています。
JavaScriptは最終章で扱われており、その割合としては、教科書全206ページに対し43ページと全体の約25%を占めています。 ただ、JavaScriptの知識としてはかなりコンパクトにまとめてある分、理解が難しいところもあるので、自身で試行錯誤を繰り返すか、別途プログラミング用の専門書が必要になりそうだなと感じました。
教科書を読んでみて少し気になったのは、ES6以降の書き方を一切取り上げてない事です。現在はスコープがわかりにくい事から、varが非推奨の流れにあるので、変数宣言はconstやletで教えてあげても良いのではないかなと思いました。少しJavaScriptをかじった人なら同じ思いを抱くと思います。もしかしたら実際の授業で「先生!変数宣言はvarではなくconstやletを使った方が良いですよ!」とマサカリを投げつける生徒が現れる日も近いかもしれません。
プログラミングが学習範囲に本格的に加わっており"情報"としての難易度は上がったもの、 実際に手を動かして、HTML、CSS、JavaScriptを書いてコードを動かしてみる、画面を作ってみるといった体験はとても楽しいと思います。高校生のうちから開発に魅了され、今後更にエンジニアが増えるんだろうなと考えると、いちエンジニアとして楽しみです。
3.ITパスポートへの橋渡しになる学習範囲
ITパスポートで問われる問題と情報Iでの学習内容で被っているところが多く見受けられ、 資格取得に繋がる知識が自然と身につきそうだなと思いました。
ITパスポート試験では、ストラテジ、マネジメント、テクノロジの大きく3分野の問題が出題されます。 特にその中の"テクノロジ"分野に関しては、教科書の内容と合致している部分がありました。
ITパスポートのシラバスver.6.0(出題範囲)での分類をベースに、 情報Iの教科書の索引から関連すると思われる学習範囲や用語を以下にまとめてみました。
ITパスポート | 情報I | |
大分類 | 中分類 | ITパスポートでも扱う用語や学習範囲 |
基礎理論 | 基礎理論 | 論理演算、確率と統計、情報量単位、A/D変換の基本 |
基礎理論 | アルゴリズムとプログラミング | フローチャート、マークアップ言語、JavaScript |
コンピュータシステム | コンピュータ構成要素 | CPU(プロセッサ)の役割、メモリやその他記憶装置の特徴 |
コンピュータシステム | 入出力デバイス | 入出力インタフェース、デバイスドライバ |
コンピュータシステム | ソフトウェア | OS、OSの機能について、応用ソフトウェア |
技術要素 | 情報デザインの考え方や手法 | Webデザイン、シグニファイア、アフォーダンス |
技術要素 | 静止画や動画ファイルなどマルチメディア技術 | 可逆圧縮、非可逆圧縮、音声のデジタル化、ラスタデータ、ベクタデータ |
技術要素 | データベース | RDBMS、SQLでのデータ操作 |
技術要素 | ネットワーク | IPアドレス、DNS、URL、パケット、HTTPやSMTPといった通信プロトコル |
技術要素 | 情報セキュリティ | マルウェア、ソーシャルエンジニアリング、公開鍵暗号方式、共通鍵暗号方式等 |
上記とは反対にITパスポートでは扱うが教科書では扱わない分野だと、 DBでは正規化やデッドロック、トランザクション処理だったり、システム面では信頼性に関する知識(稼働率、MTBF、MTTR等)やシステム構成といった業務レベルに近い知識です。それにしても、高校生のうちからエンジニアにとって必要な基礎知識の多くが学べるので、現役高校生が羨ましい限りです。
教科書の細やかな点もスゴい!
ここから紹介する内容は、実教出版様の教科書における特徴です。他出版社の教科書とは異なっている可能性があります。
1.ページ番号を基数表記している
こちらはデザインが面白いなと思ったので紹介させてください。
右下か左下の隅にページ番号が記されているのが一般的な表記だと思いますが、 情報Iの教科書ではページ番号を 2 進数、10 進数、16 進数で併記したデザインになっていました。ちなみに、右上は章題です。
10進数と16進数が縦並びになっているので相互変換時に暗算がしやすいですし、 16進数と2進数も桁で分割してから4bit(1,2,4,8)を立てていけばさっと求められるため、 学生がページ番号から基数変換がしやすいよう工夫されているように感じました。
2.用語に対して英語でルビが振ってある
特にIT関連の専門用語は、英語をカタカナ表記しているものだったり、英単語の頭文字を組み合わせてできる頭字語が多い傾向にあります。例えば頭字語だとPOS、カタカナ語だとインターフェース等があります。 それらの専門用語が教科書内で登場する際は、必ず英語でルビが振ってありました。以下はCSVに対してルビを振った例です。
オープンデータのファイル形式は、 文字だけで構成されたCSVなどのテキスト形式が多い。
高校情報I JavaScript / 萩谷昌己 , 158ページから引用
プログラミングを通して英語の知識が一緒に増えていくのは、エンジニアなら共感いただけるかなと思うのですが、似たような感じで情報の学習を通して、英単語も身についていきそうです。 また、英語を知っている人にとっては、IT関連用語の意味を推測しやすくなるので、英語のルビ表記は学習効率的にプラスに働きそうで良いなと感じました。
さいごに
その他にも教科書の良い点があるのですが、言及しきれてないので箇条書きで紹介します。
- イラストや図表が豊富でわかりやすい
- 情報伝達の重要性やどうすれば伝わるかを示しつつ、教科書のデザインそのものが情報の伝えかたの見本になっている
- 例題が頻繁に登場し暗記よりも考えさせることに比重を置いている
情報Iの教科書は学生向けに書かれているという事もあり、理解しやすさや学習のしやすさに比重を置いた構成になっていました。対象読者は高校生であるものの、いまからITパスポートを取得しようとしている方は、情報Iの教科書から入門してみるのもアリだと思います。
新卒採用や入社研修を行なっている企業は、数年後に備えて現代の学生が既にどこまでキャッチアップしているかを把握しておくといった用途としても価値があるかもしれません。なお、虎の穴ラボでは新卒採用は行なっておりません。
一通り読んでみて、"情報"を通していちばん身につけて欲しいのは、問題解決への考え方だったり、伝え方だったり、ITやデジタル技術をどう活用するかといった面に感じました。 IT関連の基礎知識はもちろんのこと、問題解決へのアプローチの仕方を身につけた新社会人が今後増える事を考えると我々も負けていられません...!!
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