虎の穴開発室ブログ

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「気づいた人がやるタスク」をなんとかするためにマネージャーが実施した3つの施策

こんにちは、虎の穴ラボのH.Kです。本記事は虎の穴ラボ2024年夏の連載ブログ 5日目の記事です。次回はiwadyさんによる「 LangServe で LLM アプリを楽々開発しよう!」が投稿される予定です。ご期待ください!

1週目は「リモートワークで工夫していること」というテーマでメンバーがブログを書いてきましたが、いかがでしょうか?

今回、エンジニアリングマネージャーという立場から見て、リモートワークで難しくなった「細かいこと」とそれに対するチーム内での施策や対応を共有します。

誰のものでもないタスクの割り振り

仕事をしていると、さまざまなタスク、依頼が発生していきます。依頼事項ならまだしも、案件を進めていく上で発生する副次的な作業(細かいドキュメントの整備や他部署、チームへのリマインドなど)は誰がやってもよく、それゆえに誰も着手しないという状況が起こります。いわゆる「気付いた人がやる作業」ですね。

リモートワークでタスクの割り振りが難しくなった要因

リモートワークになった結果、先述のようなタスクを実施してくれる人の偏りが顕著になったように感じました。背景としては以下のようなものがあると推測しました。

  • ツールの確認周期の差
  • 報酬の低減
  • タスクの認知状況の差

それぞれ詳細を見ていきます。

ツールの確認周期の差

虎の穴ラボではコミュニケーションツールとしてSlack、Backlogを利用しています。各自でこれらのツールの確認周期が違うことが挙げられます。ある人は1時間に1回確認しているかもしれませんが、ある人は1日に1回かもしれません。
マネージャーとしては集中して作業してほしいですし、集中できる環境を整えたいと考えていますが、「ある人が集中してた結果、細かいタスクがその人以外のところで拾われ続ける」という状況も避けたいです。性悪説的に考えてしまうと、リモートワークであれば「集中していた」という言い訳の可能性を排除する方法もありません。

報酬の低減

全員が出社していたときは、気軽に感謝を伝えられましたし、飲み物やお菓子でお礼ということも可能でした。しかしながら、リモートワークになって「お礼」や「感謝」のハードルが上がったように感じます。また、人知れず作業することが多くなり、人事評価のテーブルにも上がりづらいです。
人事評価と心象的な評価の双方でフィードバックが難しくなったことも、遠因にあると考えました。

タスクの認知状況の差

リモートワークでは、暗黙知の共有はかなり明示的に実施する必要があります。オフラインで集まっていたときにはできていた、画面を覗いてタスクを確認することが難しくなり、周囲での雑談を拾って、参加して他の人のタスクを認知するということもできません。結果として、各メンバーから他のメンバーのタスクの距離が心理的に離れ、「自分がやる」と言いづらいようになったのではないかと考えました。

タスク割り振りを均一にする施策

ここからは私のチームで実施した施策を紹介します。

  • ツールの確認周期の認識合わせ
  • サンクスカードの導入
  • 対応事例のチーム内共有時間の作成

ツールの確認周期の認識合わせ

前述の通り、作業に集中してほしいのでツールの確認周期を強制することはしませんでした。まずは計測ということで各メンバーの確認周期だけ認識合わせを行い、「気付いた人が作業を割り振るための参考情報」としました。

サンクスカードの導入

簡易的なサンクスカードをSlack上で導入して次の2点のメリットを享受できるようにしました。

  • 形式的だけでも報酬として機能させる
  • 対応してくれた人が外からわかるようにする

このサンクスカードは下手にシステムを作るのではなく、Slackのワークフロー機能を利用して導入しました。

slack.com

設定は非常に単純で、感謝を伝えるメンバーを選択して、メッセージを入れられるだけです。送信すると特定のチャンネルにメンション付きで感謝が伝えられます。

Thanksカードのワークフロー設定

SlackのワークフローはCSV出力機能もついているので後日確認も容易です。

一方で評価制度への紐づけはしていません。キャンベルの法則やグッドハートの法則に示される通り、いわゆるハックされた運用をされることを避けるためです。(ここでは各法則の解説は行いません)

現状のサンクスカードの立ち位置としては感謝の気持ちを伝えることと、それを外部にも可視化するのみとしています。

対応事例のチーム内共有時間の作成

定期的に事業部からの問い合わせや実施した細かいタスクの共有を行う時間を設けました。共有時間の目的は大きくわけて2つです。

  • 属人化の排除
  • タスクの偏りの計測

属人化の排除については、対応内容を共有してもらうことによって、同様の事例が来たときに完全なゼロからのスタートではなくなり、他のメンバーでも着手しやすくなると考えました。また、今後も発生しそうなタスクでドキュメントが存在しない場合はドキュメント化を促すきっかけにもなります。

タスクの偏りの計測は、共有の時間に一人の人が話し続けている状態であれば、他の人が拾えなかった要因を振り返ったり、あるいは他の人にタスクを振ってもらうように促します。

おわりに

3つの施策で共通しているのは、「まず、誰かがやってくれている」ことを認識しようという点にあります。
朝会(デイリースクラム)で共有されるもの以外にもソフトウェア開発、もっと言えば「業務」にはさまざまなタスクがあります。
これらのタスクを属人化させず、チームで取り組めるように進めるのもマネージャーの仕事だと考えます。

まずはどんなタスクをどれだけ誰がやっているか確認するところから、改善を進めて、メンバー全員が障壁なく進行できるように対応していきます!