虎の穴開発室ブログ

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「Fearless Change」を読んで変化を起こすパターンを知ろう

こんにちは、虎の穴ラボでFantiaの開発をしているよしだです。
今回は日本で10年前に発売された「Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン」という本を紹介します。

読もうと思ったきっかけ

最近運動不足解消のために散歩をするのですが、散歩をしながらPodcastを聴くことにハマっています。
fukabori.fmomoiyari.fmで本書が好きな書籍・実際に組織で実践している書籍として紹介されていました。

私個人としては小さくカイゼンしていくことが得意で変化を促すタイプではないのですが、いざもっと大きな変化を起こす時にどのように物事を進めたら良いかを知りたいと思い、読み進めました。

書籍情報

タイトル Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン
著作者名 Mary Lynn Manns, Linda Rising
監訳者名 川口 恭伸
翻訳者名 木村 卓央, 高江洲 睦, 高橋 一貴, 中込 大祐, 安井 力, 山口 鉄平, 角 征典
判型・ページ数 A5・324ページ
ISBN 978-4-621-08786-2
発売日 2014/1/30

紹介ページ:https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b294768.html

概要

本書は組織内での新しいアイデアや技術の導入を効果的に行うためのパターンや戦略を多数紹介しています。
その際「パターンランゲージ」という、繰り返し発生する問題に対しての解決策をパターンとして名前を付けて記述するというアプローチが取られています。
パターンの例
名称:「小さな成功」
要約:挑戦していることや組織変革の取組みで、やるべきことの多さに飲み込まれないように、たとえ小さな成功であってもお祝いしよう。

対象の読者

タイトルに「アジャイルに効く」とありますが、文脈を問わず組織に新しいアイデアを導入しようとするすべての人に対しておすすめできる内容となっています。
例えばIT業界であれば以下のような、一筋縄では行かない変化を起こしたい場面でも本書の考え方を取り入れられます。

  • ソフトウェア開発者として、新しいツールやライブラリをチーム内に取り入れたい。
  • チームリーダーとして、アジャイル開発を導入したい。
  • ITアーキテクトとして、マイクロサービスアーキテクチャやモジュラーモノリスアーキテクチャを採用したい。
  • 製品サポート担当として、顧客のトレーニングをオンライン化したい。
  • 採用担当として、イベントの開催やコミュニティ形成したい。

構成

「第1部 概要」「第2部 事例紹介」「第3部 48のパターン」の3部構成となっています。
第1部や第2部は短いエピソードが中心なのですが、その中でも「エバンジェリスト(1)」のような表記で、第3部で紹介されるパターンが何度も参照されています。(括弧内の数字はパターン集で出てくる順番)
パターンの使い方や体験レポートと、パターンの説明ページが強く結びついているので、同じような課題に遭遇した時には強力なリファレンスとして何度も読める書籍になっています。

本書の概要とパターンを一覧化したチートシートを監訳者の川口さんが公開しており、より詳しく全体像を知りたい方は合わせてご確認ください。

第1部 概要

第1部は大きく二つに分かれています。
前半が新しいアイデアを普及したいと考えた情熱に溢れた人である「エバンジェリスト」の始め方とアイデアの広め方が中心に書かれています。
また、後半は実際に普及を業務として実施する「正式な推進担当者」の立ち位置として、抵抗と向き合いながら組織に影響を広げていく話が書かれています。

第2部 事例紹介

第2部ではストーリー調で組織にアイデアを広めた4人の実践者の話が書かれています。

第3部 48のパターン

1つのパターンの紹介が「はじめに」「要約」「状況」「問題」「フォース」「解決方法」「結果状況」「使用例」というフォーマットで記述されています。
解決方法だけが知りたい・情報量が多いと感じる方も居るかもしれませんが、「問題」や「フォース」の情報によって解像度が高まり、コンテキストを理解しやすくなります。また「結果状況」では実践した際の状況が明記されており、意識すべき点や次のアクションが明確になります。 方法論を伝えるだけではなく、「アイデアを広めようとする人が情熱的になりすぎると引いてしまう」のような現実感のある記述もあります。

感想

冒頭では変化に対する誤解として「良いアイデアであればみんなに受け入れられる」「新しいアイデアを紹介すれば、あとは何もしなくて良い」の2つを挙げています。
IT業界でも誰かが熱量を持って作った新しいツールやライブラリが毎日のように登場しますが、必ずしも広まるわけではなかったり、それ単体が何でも解決する銀の弾丸ではなかったりします。

書籍では関係者をマーケティングで用いられるイノベーター理論に当てはめ、どこから広めていくかが書かれている点は興味深かったです。
新しいものが好きなイノベーターは新しいものというだけで広めやすいですが、アーリーアダプターやアーリーマジョリティのような人たちには根拠も提示しつつ説明していく必要があるといった具合です。
個人的には何かを紹介する時にあまり考えたことがなかった視点なので参考になりました。

本書はイノベーター理論だけにとどまらず、受ける抵抗や対処法をパターンとして、変化に至る道のようにプラクティスがまとめられています。
特に私が取り入れたいと思ったパターンは、「テーラーメイド(26)」と「ちょうど十分(34)」で、しばしば多くの情報を長々と伝えてしまいがちなので、相手に合わせた簡潔なメッセージを発信するよう心がけます。

最後に

本書が発売された2014年の後、IT関係でも半数以上の企業がクラウドサービスを利用するようになったり、コロナショックによるリモートワークへの移行や生成AIの登場など外部要因で変化を迫られることもありました。
変化の起こし方を知り、一人で状況を変えなければいけないという思い込みを捨てて周囲を巻き込めれば、不確実性が高い中でも不安や恐れを抱え込みすぎずに対応できると思います。 自身で組織に変化を起こしていきたいと考える方は、是非一読いただければと思います。

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