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【書評】「Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち 」を読んで

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こんにちは、虎の穴ラボの山田です。

先ごろ札幌に引越しをしたのですが(今は地方勤務をしています)、その少し前に書店に伺った際、ラムダノートの新刊を見つけて購入をしました。今回はその本の書評になります。

書籍情報

  • タイトル:Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち
  • 著者:株式会社VOYAGE GROUP 監修、和田卓人 編
  • 出版社 : ラムダノート
  • 発行:2020年8月7日

Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たちwww.lambdanote.com

どんな内容?

本書は、和田卓人氏による株式会社VOYAGE GROUPのソフトウェア技術者へのインタビューを、1冊の書籍としてまとめたものです。 株式会社VOYAGE GROUPでは、事業毎に会社が分かれ、それぞれが関連会社としてGROUPに属しています。この本での第1章から第5章では、各システムを開発・運用している事業の技術者へのインタビューを行なっているのですが、それはそのまま各会社に属する技術者へのインタビューともなっています。

それぞれのシステムを現在担当されている技術者達が、今ある形にするためにどのような考え方で、どのような手段を取ってきたか。また今後はどうしていきたいかをインタビュアーの和田氏が問い出していきます。

著者による「補足説明」も随所にあり、わかりやすく読みやすい内容になっています。

第1章 fluct - 広告配信の舞台裏の技術者たち

ブラウザでウェブサイトを閲覧すると広告が表示されるところがあります。この章でインタビューを受けているのは、こうしたウェブサイトに表示される広告を動的に決定する、メディア側のシステムを開発・運用しているfluct社の技術者になります。

この章では、10年ほど前から始まったfluct社でのシステム開発について語られています。 10年前、2010年辺りはクラウドがまだ一般的でなかった事からオンプレミスで開発が始まった事。サービス開始から半年でプロジェクトマネージャが代わり、2週間に1回だったデプロイのサイクルが毎日になった事。fluct社内の「とりあえず使ってみる」文化により徐々にシステムの一部がクラウド化していった事、2015年から始まったリファクタリング、そしてオブザーバビリティなどについて語られています。 また、コラムなどにより現在のインターネット広告のシステムなどについても丁寧に説明されています。

この章で印象的だったのは、管理システムで取られたリファクタリングの方法と、「技術的負債の返済に必要な腕力」について語られているところでしょうか。手をつける人が多くなってしまうシステムというものはあるものですし、それによって積み重なった技術的負債への対処は考えさせられるところがありました。

第2章 Zucks - フルサイクル開発者の文化

この章でインタビューを受けているのは、fluct社と同様にウェブサイトに表示される広告関連のシステムなのですが、fluct社が運用するメディア側とは別側面の、広告主側のシステムを開発・運用しているZucks社の技術者になります。

2012年から始まったシステム開発に、最初から全面的にクラウドを利用した事。当初はMVP(Minimum Viable Product)から始めた事。Zucks社のエンジニア文化として全員がフルサイクル開発者である事。数多くの言語が使用されている事。ドキュメントが全く存在しない(代わりにGutHubのissueを使う)事。そして、チーム文化のスケールについて語られています。

この章で印象的だったのは、多くの言語を導入する、その理由について語られているところでしょうか。

新しいものを覚えるのが億劫になってしまうよりは、それが当たり前になっているチームの方がいいですよね。新しいものを取り入れるのを一回止めてしまうと、重い腰が上がらなくなってしまい、新しいものに対して悲観的になってしまう、そちらの方がリスクだろうと思います。 (「Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち 」63ページより引用)

言われている通り億劫になる事はあると思うので、考えさせられました。

第3章 VOYAGE MARKETING - 20年級大規模レガシーシステムとの戦い

この章でインタビューを受けているのは、2000年代前半から続く老舗のウェブサービスを開発・運用するVOYAGE MARKETING社の技術者です。

1999年に発足したシステムのこれまでの経緯、15年に渡りシステムを運用してきた事で積み上がった技術的負債、現状把握からレガシー攻略の戦略を立て、5年をかけてコツコツと改善されていった事などが語られています。

この章は、実際にこういったシステムを目にした時、自身ならどうしただろうと考えながら読んでいました。和田氏の問いに以下のような言葉が出てきます。

-既存のシステムが複雑になってしまっていて、何かを加えたり何かを直したりしようとすると影響調査に工数が取られてしまい、同じことをやるにもかかる時間がだんだん増えていってしまう、というのが技術的負債の現象面なので、まさに技術的負債のど真ん中ですね。 (「Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち 」80ページより引用)

ここから技術的負債の返済の内容が語られていきます。

第4章 VOYAGE Lighthouse Studio - 数十万記事のメディアをゼロから立ち上げる

この章でインタビューを受けているのは、2015年から運用を始めたゲーム攻略サイト事業を行うVOYAGE Lighthouse Studio社の技術者です。

2015年から事業を立ち上げ、工夫を積み重ねる事で業界の中では後発組ながら、業界のトップグループに入る規模になった事。当初はGoogleのウェブマスター向けのブログ*1を参考にして速度重視で「静的サイトジェネレータ」を導入した事。丁寧な記事が成長のきっかけとなった事、規模が大きくなっていく事への対処などについてが語られています。

この章で印象的だったのは、速さと質、そしてランニングコストについて語られているところでした。長く運用する上では大切な事だと思います。

第5章 サポーターズ - 事業の成長を止めない手段としてのシステム刷新

この章でインタビューを受けているのは、学生の就職活動を支援するサービスを事業としているサポーターズ社の技術者です。

2012年の発足当初は外部委託で作ったシステムで事業を開始した事。2017年にVOYAGE GROUPの別会社が開発に携わり始めた事。発足当初からは業務の特性も変わり、現状のシステムを工夫しながら使うようになっていた事。そしてゼロからシステムを作り直し、MVPでリリースした事。事業を進めていく上で、組織も再編した事などが語られています。

この章で印象的だったのは自分たちのシステムを全員で見ている、自分たち開発者の感覚もサービスに反映させていきたい、という部分でしょうか。章の中に、このような文章が出てきます。

サポーターズ自体は、就活サービスとしては後発なので、他社と違う事をするのはビジネスとして見るとどうしても不安があります。しかし、特にエンジニアの採用市場に寄せるのであれば、自分たち開発者の感覚もサービスに反映させていきたいと考えて、「ビジネス側から言われたものをそのまま作る事はしない」という姿勢をはっきりさせています。

これに続き、組織として、技術者とビジネス側とがどのように開発を行なっているかが語られています。

第6章 データサイエンス - エンジニアによるビジネスのための機械学習

最後の章でインタビューを受けているのは、第2章で登場したZucks社で「データサイエンスエンジニア」として働かれている技術者の方です。

この章では、データサイエンスを始めたきっかけや、機械学習などを用いた業務内容、データサイエンスを活かす難しさ、エンジニアがデータサイエンスをやる強みなどについてが語られています。

この章を読むと、データ分析に使えるデータを作り続ける事が必要と感じられます。

読み終わって

事業を継続していく上で、技術者たちがどのような手段をとってきたかがこの本では語られています。やり方は各社各様なのですが、どの会社の技術者も皆一様に今後の事業の為に開発をされているというのが非常によく伝わる内容です。

ある会社では、既存のシステムを活かす為に5年をかけて不必要な部分を削除し整理をして、今後の開発を進めやすくしていたり。ある会社では、当初と業務特性が変わり、システムを作り直す事で今後の開発をやりやすくしていたり。MVPでのリリースから開始し、今後の見通しが経つごとに徐々にスケールさせてきた事など、運用を続けていく上で参考になる部分も多くあります。

長期間運用を続けているシステムに携わっている方には、是非ご一読をおすすめします。

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