虎の穴開発室ブログ

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「PMBOK対応 童話でわかるプロジェクトマネジメント 第2版」を読みました

こんにちは、虎の穴ラボの大場です。

私は先日、EC開発チームからシステムリプレイスチームに移籍し、役割もスクラムマスターから開発メンバーへ転向しました。 Next.js やTypeScriptといったモダンな技術に触れられる環境で開発をしてみたかったため希望してチームを移して頂きました。 ※虎の穴ラボでは上司と相談のうえチーム移動が行える仕組みがあり、自分がチャレンジしたい環境に身を置く事ができます。

スクラムマスターから開発メンバーとして役割が変わりましたが、これまでのマネジメント経験を生かして、 何かと苦労の絶えないパパさんスクラムマスターを支えていければなと思います。

さて今回は、チーム移籍前のスクラムマスターだった頃に読んだ「童話でわかるプロジェクトマネジメント 第2版」について紹介いたします。

基本情報

タイトル PMBOK対応 童話でわかるプロジェクトマネジメント[第2版]
著者 飯田剛弘
発売日 2022/10/27
発行 秀和システム
ISBN 9784798068626

www.shuwasystem.co.jp

私が本を手に取った理由

  • プロジェクトという大きな単位でのマネジメント経験がなかった
  • プロジェクトマネジメントというものを体系的に学びたかった
  • PMBOK(PMBOKガイド)は難しそうという思い込みから手を出す事に躊躇していた

当時の私はスクラムという名の管理フレームワークのもとスクラムマスターとして、 スプリントプランニングやレトロスペクティブ等のイベントをこなす日々送っていました。

案件単位でマネジメントする機会には恵まれたもののプロジェクトという大きな単位でのマネジメント経験もなく、 改めてプロジェクトマネジメントにおいて体系的に学んだことがないなぁといった思いがありました。

かといってPMBOKガイド(以降PMBOK)にいきなり手を出しても初学者に取っては難易度が高く、 買っても私の積読コレクションの仲間入りをしてしまうのでは・・・と思い躊躇していました。お値段も1万円ちょっととなかなか値が張るという理由もあります。

そんな折「PMBOK対応 童話でわかるプロジェクトマネジメント」というタイトルを目撃し、 初学者がPMBOKに手を出す前の取っ掛かりとしては良さそう!と思い手に取ってみました。

この本の内容

本書のはじめの方で初学者向けにプロジェクトマネジメントはただの「チームで成果を出す技術」と定義付けしてくれます。読み進めるとその具体的な技術について学べる内容になっています。

特徴的なのがタイトルの通り童話に例えて解説しているところです。 下記のように、童話パート⇨解説パート⇨童話パート⇨解説パート...と繰り返しながら進行していきます。

  • 童話パート:「もし主人公がプロジェクトマネジメントを知っていたら」というIF設定でのストーリー展開
  • 解説パート:ストーリー内でプロジェクトに例えられるところまで話が進んだら一旦区切って解説パートに移る

例えば、3匹の子豚の場合、お母さん豚が子豚に自分達で家を作るように指示したところで一旦区切り、


1.お母さん豚からの「家を作る」という指示

↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

2.作る成果物(家)は決まっているが、今までやったことのないこと

↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

3.つまりプロジェクト!


といった具合に、童話からプロジェクトマネジメントの話へ見事に展開していきます。

誰もが知っている童話で心理的な抵抗感を和らげ、その延長線で体系的な解説にシフトしていくので、 全くの初学者やプロジェクトマネジメントに苦手意識がある人でも読み進めやすい構成になっています。

第1版との違い

童話でわかるプロジェクトマネジメント 第2版」では、PMBOKの第6版までの知識に加えて第7版を学習できる内容になりました。

前提知識として、2021年にPMBOKは第7版となり大きな変更がありました。プロセスベースの考え方から結果や価値提供を重視する考え方に変わり、プロジェクトを具体的にマネジメントするにはどうすれば良いのかについて、あまり触れられなくなったそうです。

「童話でわかるプロジェクトマネジメント」の第1版発行当時の2015年はPMBOKも第5版が最新。大きく変更があった現在の第7版の内容が全く反映されていません。

今回の第2版では、第6版以前に触れられてきたプロジェクトの進め方を踏まえ第7版での変更点を加えたことで、過去のPMBOKを知らない初学者に寄り添った内容になっています。

本書をオススメするポイント

  • 有名な童話がベースなので、プロジェクトマネジメントの例としてイメージしやすい
  • ストーリーの流れは簡単だが、プロジェクトに置き換えての説明や専門用語の説明は簡単にし過ぎずにしっかり解説している
  • 重要箇所を教訓として一言でまとめており、その後詳細な解説を行い、最後にはまた図や表でわかりやすく説明されている

なお章まとめでは箇条書きで、いままで出てきた教訓がまとめられており、忙しい人はここを切り取って読むだけでも価値があるかなと思います。

童話から学べる内容

以下は本作の章立て兼、収録されている童話一覧です。

  • 第1章 3匹の子ブタ~プロジェクトを成功に導く「段取り」~
  • 第2章 ウサギとカメ~みんなが同じ方向を向ける「ゴール設定術」~
  • 第3章 桃太郎~チームで目的を達成する「仲間術」~
  • 第4章 ヘンゼルとグレーテル~段取りよくプランニングし、困った時に対応できる「リスク管理術」~
  • 第5章 アリとキリギリス~進捗を加速させる「情報共有術」~
  • 第6章 長靴を履いた猫~メンバーと仲良くなる「信頼構築術」~
  • 第7章 シンデレラ~ネガティブな状況とうまく関わって、協力を得る「付き合い術」~
  • 付章 PMBOKへの橋渡し

物語の大筋や結末としては概ね原作通りですが、登場人物は様々なプロジェクトマネジメント手法を駆使して困難を乗り越えていきます!! 全部で7つの童話が収録されていますが、3つピックアップしてどんな内容が学べるかを紹介します。

3匹の子豚

母親豚(プロジェクトスポンサー)が3匹の子豚(プロジェクトマネージャー達)へ自分の家を作って暮らすよう言いつけた有名な童話をプロジェクトに例えて紹介しています。母親への相談(ステークホルダーへの相談、要求事項の確認、ヒヤリング内容から要求の具体化)から綿密な計画を立てる優秀過ぎる末っ子豚の立ち回りが読んでいて面白いです。

ウサギと亀

ご存じの通り山へ向かってウサギと亀が競争するお話です。プロジェクトの目標設定や進め方について、全く行わないウサギとしっかり目標を見定める亀を対比させる構造をとっています。 歩みの遅い亀さんは、SMARTの法則を利用しGOALを明確に設定することでウサギさんに勝利します。最終的にはウサギさんと亀さんで根本原因分析を行い仲直りで幕を閉じます。

ヘンゼルとグレーテル

ヘンゼルとグレーテルはご存じの通り(?)、リスクマネジメントを学べるお話です。子供達は親から森の中に置き去りにされるリスクを(マイル)ストーンを目印に用いて回避します。不確実性の高い状況下でリスクに対してどう向かっていけばいけば良いかがわかる内容となっています。

特にヘンゼルの「トリガーポイントだ。コンティジェンシー・プランを実行しよう」は今作の名シーンです。 この話では子供たちが「自分達が捨てられる」というリスクを偶然知ることができたのは幸いですが、実際のプロジェクトとなるとキックオフ時点では情報が少なく、リスクを知る(考える)ことまで手が回らず疎かになりがちなポイントだと思います。

その他収録されている童話の詳しい紹介は割愛しますが、桃太郎からはメンバーとのコミュニケーション方法、アリとキリギリスでは情報共有、進捗管理について、長靴を履いた猫ではメンバーとの信頼関係の構築方法、シンデレラでは、ステークホルダーとの関わり方などが学べます。

まとめ

本書はタイトル通り童話を題材として、プロジェクトマネジメントの手法を解説する内容になっています。わかりやすさを重視し「PMBOKを読む前のステップ」として特化している本だと思います。

童話のストーリーになぞらえつつPMBOKに関する知識を説明してくれるので、 プロジェクトマネジメントに関する専門用語や理論を理解しやすい構成になっています。

また、童話の登場人物たちがマネジメント手法を使いこなす様は、自分の知っている原作上での振る舞いとのギャップがあり、ストーリー単体としても純粋に面白いです。

作者の意図としては読者が楽しく学べるように設計し工夫して執筆されたかと思いますが、その結果マネジメントの入門書の枠を超え、読み物としても楽しめる内容にまで昇華された作品になっているように感じました。

私と同様に、PMBOKは難しそうと思っている方やPMBOKに触れるのは初めてという方にとっては特におすすめの1冊です。 もし、当ブログを読んで興味が湧いた方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

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